秋の展示
詩歌とともに-棟方と文学
2020年9月24日(木)~12月6日(日)
午前9時~午後5時(11月からは午前9時30分開館)
月曜日(11月23日、30日は開館)
油絵を描いていた棟方志功が板画を始めるようになったのは、川上澄生の版画作品《初夏の風》を見たことがきっかけでした。川上自作の詩が彫り込まれている版画を見たとき、棟方は「いいなァ、いいなァ」と、心も体も伸びて行くような気持になっていたそうです。
棟方は上京する以前から文学を愛する青年でした。画家を志し、絵画グループを作って画業に励む一方で「狢の会」というグループを結成し、演劇や文学活動にいそしんでいました。その当時のことを「わたしたちは、また絵だけでなく詩や小説などで思想を高めねばならないと考えて『狢の会』をつくりました。週に一度集まって、武者小路実篤の『その妹』とかその他の劇を読み合わせたり、啄木の歌を朗読したりしました。それはそれは、心の躍る楽しさで、夜が朝になったりしました」(わだばゴッホになる-より)と回想しています。
棟方は板画を始めてからも画家よりは文学者との交友を深めていきました。棟方の出世作と言える《大和し美し》は、愛知県出身の詩人佐藤一英が新詩論に発表したものを同郷の文学者福士幸次郎を介して制作の許可を得たもので、棟方作品の中でも傑作のひとつに数えられています。また、富山県福光町(現・南砺市)に疎開していた時に聞いた河童伝説をヒントに「瞞着川」という物語を作り、更にそれを板画に制作するなど、棟方作品には詩歌に触発されて生まれたものがたくさんあります。交友のあった文学者の作品を板画にしたものや能、狂言、仏教の経典、自作の歌、俳句など様々な詩歌が棟方作品に生まれ変わりました。
棟方が描いたものは詩歌だけではなく故郷の風物、女人、風景など自身の目に映る様々なものでしたが、秋の展示では、棟方の心に沁み、創作意欲を湧き出させた文学作品に触発されて生まれた作品を紹介いたします。その中に流れている棟方志功の詩心を感じていただければと存じます。
主な展示作品
《女人菩薩図》倭画
制作年不明
《流離抄》より天狗の柵 板画
1953
《關徹》書
1969
《啄木の歌》陶器
制作年不明
春の展示
※7月5日まで延長
夏の展示
秋の展示
冬の展示
2021年3月14日(日)