棟方志功記念館

   

秋の展示

秋の展示
安於母利妃)

2023年9月20日(水)~12月17日(日)
開館時間/午前9時~午後5時(11月からは午前9時30分開館)
休館日/月曜日(祝日及び12月4日、11日は開館)
無料開館/11月3日・文化の日
観覧料/一般550円(450円)、学生(専門含む)300円(200円)、高校生200円(100円)小・中学生 無料
※( )は20名以上の団体料金

 棟方作品といえば、女人を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。女人は棟方が最も多く描いたモチーフの一つです。白や黒の身体で描かれる裸体像は画の中で舞い、上へ下へと浮遊します。谷崎潤一郎の小説『鍵』の挿絵で制作した《大首の柵》(1956)で人気に火が付いた大首絵の制作に晩年は追われたほど、棟方といえば女人というイメージは大衆に広がり、求められました。しかし棟方は単なる美人画では終わりません。「裸体(はだか)の、マッパダカの顔の額の上に丸い星をつければ、もう立派な佛様になって仕舞うんだから、ありがたく、忝(かたじ)けないんですね」(『板画の肌』1956) このように話し、女人礼讃を根底にしつつ、時には仏様にも成り切る女人の姿を借りて、経典や詩歌、音楽や故郷、大自然なども表現しました。作品の大小も公私も問わず、初期から晩年まで様々に描いています。
 人気を博した円窓大首絵の一つ《門世の柵》(1968)。門世とは、画面の四隅に置いた東西南北の文字が世界へ開ける門だという棟方の造語です。額に星のある他の女人と比べどこか母のような包容力を感じさせるこの作品は、別名を《安於母利妃の柵》といいます。棟方の女人礼讃の原点には、貧しい暮らしの中15人の子どもたちを生み育てた故郷青森の母の姿、母性への憧れがありました。母や故郷への想いも内包した生命力に溢れふくよかな女人像は、板画ではダイナミックでたくましく、倭画では強弱のついた柔らかな線と色彩の艶やかさが目を惹きます。生気に満ちた作品は、それを見る者にもエネルギーを与えてくれます。
 秋の展示では、愛(かな)しい母から受けた慈愛から広がった女人像を、棟方を育んだ青森の雄大な自然も交えて展覧いたします。青森から世界へと開花していった棟方志功。故郷の母なる海や大地とともに、好んで描いた多様な表現による女人の姿をご覧ください。

主な展示作品

《鍵板画柵》大首の柵 板画
1956

《海山の柵》板画
1958

《鷺畷の柵》板画
1960

《胡須母寿花頌》倭画
1974